医学研究の利益相反に関する細則
日本排尿機能学会は、医学研究の利益相反に関する指針を策定した。この指針に基づき、 本学会会員などの利益相反(COI)状態を公正にマネージメントするために、「医学研究の利益相反に関する指針の細則」を次のとおり定める。
第1条(COIを申告すべき対象者と申告すべき事項、関連する団体・組織)
第1項
-
COIマネージメントの対象者を次のとおり定める。
- 会員は、研究成果を学術講演などで発表する場合、当該研究実施に関わるCOI状態 を発表時に、本学会の指針・細則に従い、所定の書式で適切に開示する。 研究などの発表との関係で、指針に反するとの指摘がなされた場合には、理事長は 総務委員会に審議を求め、その答申に基づいた妥当な措置を取る。
- 本学会学術機関誌などで論文発表する場合の自己申告書の提出が求められる者は、会員のみでなく、非会員も対象となる。
- 役員(理事長、理事、監事)、学術集会担当責任者(大会長)、各種委員会の委員長、特定の委員会(ガイドライン委員会、学術委員会、編集委員会、保険委員会、倫理委員会、総務委員会など)委員、診療ガイドライン作成委員会の委員、暫定的な作業部会 (小委員会、ワーキンググループなど) の委員、LUTS編集委員、学会事務局長は、本学会に関わるすべての事業活動に対して重要な役割と責務を担っており、当該事業に関わるCOI 状況については、就任する時点で所定の書式に従って自己申告を行なう。就任後、新たにCOI 状態が発生した場合には規定に従い、修正申告を行うこととする。役員と委員などについては特段のCOIマネージメントが求められる。
- 本学会雇用の事務職員には、COI に関する守秘義務も存在する。同時に、1~3の対象者の配偶者、一親等の親族、または収入・財産を共有する者をCOI 申告の対象者に含める。
第2項
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対象となる事業活動を次のとおり定める。
本学会が行う以下の事業活動に対してすべての参加者に、COI 指針を適用する。- 学術集会(年次総会含む)の開催
- 学会機関誌、学術図書などの発行
- 研究および調査の実施
- 研究の奨励および研究業績の表彰
- 生涯教育活動の推進
- 営利を目的とする団体・企業等との連携および協力
- 国際的な研究協力の推進
- その他目的を達成するために必要な事業
特に下記の活動を行う場合には特段の指針遵守が求められる。- ①本学会が主催する学術集会、講演会、セミナーなどでの発表
- ②本学会発刊の学会誌・機関誌などでの発表
- ③診療ガイドライン、マニュアルなどの作成
- ④臨時に設置される調査委員会、諮問委員会などでの作業
- ⑤企業や営利団体主催・共催の講演会(Websiteでのセミナー・講演含めて)、ランチョンセミナー、イブニングセミナーなどでの発表
第3項
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第2条に記載されている、「医学研究に関連する企業・法人組織、営利を目的とする団体」とは、医学研究に関し次のような関係をもった企業・組織や団体とする。
- 医学研究を依頼し、または、共同で行った関係(有償無償を問わない)
- 医学研究において評価される療法・薬剤、機器などに関連して特許権などの権利を有している関係
- 医学研究において使用される薬剤・機材などを無償もしくは特に有利な価格で提供している関係
- 医学研究について研究助成・寄付などをしている関係
- 医学研究において未承認の医薬品や医療器機などを提供している関係
- 寄付講座などのスポンサーとなっている関係
第4項
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第2条に記載されている、「組織COI(institutional COI)」とは、申告者が所属する研究機関組織そのものが保有する特許あるいはロイヤリティなどに起因するCOI、あるいは、所属機関・部門の長が特定の企業などとの間で研究費、寄附金、特許などによるCOIを有し、かつ、申告者が、その長と現在あるいは過去3年間に共同研究者、分担研究者の関係にある場合を指す。ここで言う所属機関・部門とは、大学、病院、学部またはセンターなどである。この場合、申告者が関わる当該学会事業活動(該当する企業の医薬品、医療機器等を対象とする診療ガイドライン策定など)に対して直接あるいは間接的に影響を及ぼす可能性が想定されれば、所定の書式に従ってCOI 申告する。なお、自己申告に必要な金額は、第2条-Xのごとく、各々の開示すべき事項について基準を定めるものとする。
第2条(COI自己申告の基準について)
COI自己申告が必要な金額は、以下のごとく、各々の開示すべき事項について基準を定めるものとする。
- 医学研究に関連する企業・法人組織や営利を目的とした団体(以下、企業・組織や団体という)の役員、顧問職については、1つの企業・組織や団体からの報酬額が年間100万円以上とする。
- 株式の保有については、1つの企業についての1年間の株式による利益(配当、売却益の総和)が100万円以上の場合、あるいは当該全株式の5%以上を所有する場合とする。
- 企業・組織や団体からの特許権使用料については、1つの権利使用料が年間100万円以上とする。
- 企業・組織や団体から、会議の出席(発表)に対し、研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当(講演料など)については、1つの企業・団体からの年間の講演料が合計50万円以上とする。
- 企業・組織や団体がパンフレットなどの執筆に対して支払った原稿料については、1つの企業・組織や団体からの年間の原稿料が合計50万円以上とする。
- 企業・組織や団体が提供する研究費については、一つの企業・団体から臨床研究(受託研究費、共同研究費など)に対して支払われた総額が年間100万円以上とする。
- 企業・組織や団体が提供する奨学(奨励)寄付金については、1つの企業・組織や団体から、申告者個人または申告者が所属する部局(講座・分野)あるいは研究室の代表者に支払われた総額が年間100万円以上の場合とする。
- 企業・組織や団体が提供する寄付講座に申告者らが所属している場合とする。
- その他、研究とは直接無関係な旅行、贈答品などの提供については、1つの企業・組織や団体から受けた総額が年間5万円以上とする。
- 第1条第4項で述べた組織COIに関しては以下のごとく定める。
- ①企業・組織や団体が提供する研究費については、1つの企業・団体から、医学系研究(共同研究、受託研究、治験など)に対して、実質的に使途を決定し得る研究契約金の総額が年間1,000万円以上とする。
- ②企業・組織や団体が提供する寄附金については、1つの企業・団体から、申告者が所属する所属機関・部門そのもの、あるいは所属機関・部門の長に対して、実質的に使途を決定し得る寄附金で実際に割り当てられた総額が年間200万円以上とする。
- ③その他として、申告者所属の研究機関、部門あるいはそれらの長(過去3年以内に共同研究、分担研究の関係)が、株式保有(全株式の5%以上)、特許使用料、あるいはベンチャー企業への投資などがある場合とする。
第3条(本学会機関誌などにおける届出事項の公表)
本学会の機関誌(日本排尿機能学会誌、LUTS)などで発表(総説、原著論文など)を行う著者全員は、発表内容が本細則第1条第2項に規定された企業・組織や団体と経済的な関係を持っている場合、COI状態を投稿規定に定める方法で事前に学会事務局へ届け出なければならない。日本排尿機能学会雑誌以外の本学会刊行物での発表もこれに準じる。なお、届けられたCOI状態は論文査読者には開示しない。
第4条(本学会講演会などにおけるCOI事項の申告)
第1項
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発表者(会員、非会員と問わず)は本学会が主催または共催する年次総会・教育セミナー、公開講座などで医学研究に関する発表・講演を行う場合、筆頭発表者は、本人または第1条第1項で定められた者の臨床研究に関連する企業や営利を目的とした団体との経済的な関係について、演題応募の時点から遡って過去3年におけるCOI状態の有無を、抄録登録時に学術大会の抄録登録ページの自己申告画面あるいは、抄録登録ページに自己申告画面がない場合には様式1により自己申告しなければならない。
筆頭発表者は該当するCOI状態について、発表スライドの最初(または演題・発表者などを紹介するスライドの次)に様式2-aにより、あるいはポスターの最後に所定の様式2-bにより開示するものとする。
第2項
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発表演題に関連する「医学研究」とは、医療における疾病の予防方法、診断方法および治療方法の改善、疾病原因および病態の理解ならびに患者の生活の質の向上を目的として実施される医学系研究であって、人間を対象とするものをいう。人間を対象とする医学系研究には、個人を特定できる人間由来の試料および個人を特定できるデータの研究を含むものとする。個人を特定できる試料またはデータに当たるかどうかは文部科学省・厚生労働省の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に定めるところによるものとする。
第5条(役員、委員長、委員などのCOI申告書の提出)
第1項
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本学会の役員(理事長、理事、監事)、学術集会担当責任者(大会長)、各種委員会のすべての委員長、特定の委員会(ガイドライン委員会、学術委員会、編集委員会、保険委員会、倫理委員会、総務委員会)の委員、暫定的な作業部会 (小委員会、ワーキンググループなど)、診療ガイドライン作成委員会の委員、学会事務局長は、就任時から遡って過去3年間におけるCOI状態の有無を所定の様式3「役員などのCOI自己申告書」あるいは様式4「ガイドライン作成委員会のCOI自己申告書」にしたがい、新就任時と、就任後は1年ごとに、COI自己申告書を理事会へ提出しなければならない。但し、COIの自己申告は、本学会が行う事業に関連する企業・法人組織、営利を目的とする団体に関わるものに限定する。なお、様式3を既に届けている場合、その年度内にCOI自己申告書の提出を必要とする新たな役員業務に就いたとしても、COI自己申告書の提出の必要はない。一方、診療ガイドラインの作成委員に就いた場合には、新たに様式4の提出が必要である。なお、様式4を既に届けている者が、様式3の提出を要する役職に就いた場合、改めて、様式3の提出を要する。
第2項
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様式3あるいは様式4に記載するCOI状態については、各々の開示・公開すべき事項について、自己申告が必要な金額は、第2条で規定された基準額とし、様式3あるいは様式4にしたがい、項目ごとに金額区分を明記する。様式3および様式4は就任時から遡って過去3年分を記入する。但し、役員などは、在任中に新たなCOI状態が発生した場合には、8週以内に様式3あるいは様式4を以て報告する義務を負うものとする。
第6条(COI自己申告書の取り扱い)
第1項
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学会発表のための抄録登録時あるいは本学会雑誌への論文投稿時に提出されるCOI自己申告書は提出の日から5年間、理事長の監督下に事務局で厳重に保管されなければならない。同様に、役員の任期を終了した者、委員委嘱の撤回が確定した者に関するCOI情報の書類なども、最終の任期満了、あるいは委員の委嘱撤回の日から2年間、理事長の監督下に事務局で厳重に保管されなければならない。2年間の期間を経過した者については、理事長の監督下において速やかに削除・廃棄される。但し、削除・廃棄することが適当でないと理事会が認めた場合には、必要な期間を定めて当該申告者の COI情報の削除・廃棄を保留できるものとする。
第2項
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本学会の理事・関係役職者は、本細則にしたがい、提出された自己申告書をもとに、当該個人のCOI状態の有無・程度を判断し、本学会としてその判断にしたがったマネージメントならびに措置を講ずる場合、当該個人のCOI情報を随時利用できるものとする。しかし、利用目的に必要な限度を超えてはならず、また、上記の利用目的に照らし開示が必要とされる者以外の者に対して開示してはならない。
第3項
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COI情報は、第5条第2項の場合を除き、原則として非公開とする。COI情報は、学会の活動、委員会の活動(附属の常設小委員会などの活動を含む)、臨時の委員会などの活動などに関して、本学会として社会的・道義的な説明責任を果たすために必要があるときは、理事会の協議を経て、必要な範囲で本学会の内外に開示もしくは公表することができる。この場合、開示もしくは公開されるCOI情報の当事者は、理事会もしくは決定を委嘱された理事に対して意見を述べることができる。但し、開示もしくは公表について緊急性があって意見を聞く余裕がないときは、その限りではない。
第4項
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非会員から特定の会員を指名しての開示請求(法的請求も含めて)があった場合、妥当と思われる理由があれば、理事長からの諮問を受けて総務委員会が個人情報の保護のもとに適切に対応する。しかし、総務委員会で対応できないと判断された場合には、理事長が指名する本学会会員若干名および外部委員1名以上により構成される利益相反調査委員会を設置して諮問する。利益相反調査委員会は開示請求書を受領してから30日以内に委員会を開催して可及的すみやかにその答申を行う。
第7条(総務委員会)
医学研究を実施する会員、COI問題に精通している者、関連する法律や規則などに詳しい者などを含めるが、個人情報保護ならびに秘密保持を図る観点から、開示された情報を取り扱う人数として若干名に限定する。また、構成委員として男女ならびに外部の有識者からなる委員もある一定の割合で加わることを考慮する。委員長は理事であることとし、理事長が推薦し、理事会の議を経て理事長が任命する。総務委員会委員は知り得た会員のCOI情報についての守秘義務を負う。総務委員会は、理事会、安全管理委員会と連携して、利益相反指針ならびに本細則に定めるところにより、会員のCOI状態が深刻な事態へと発展することを未然に防止するためのマネージメントと違反に対する対応を行う。委員にかかるCOI事項の報告ならびにCOI情報の取扱いについては、第5条及び第6条の規定を準用する。
第8条(指針違反者への措置)
第1項
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本学会の機関誌(日本排尿機能学会誌、LUTS)で発表を行う著者、ならびに本学会講演会などの発表予定者によって提出されたCOI自己申告事項について、疑義もしくは社会的・道義的問題が発生した場合、本学会として社会的説明責任を果たすために総務委員会が十分な調査、ヒアリングなどを行ったうえで適切な措置を講ずる。深刻なCOI状態があり、説明責任が果たせない場合には、理事長は、総務委員会に諮問し、その答申をもとに理事会で審議のうえ、当該発表予定者の学会発表や論文発表の差止めなどの措置を講じることができる。既に発表された後に疑義などの問題が発生した場合には、理事長は事実関係を調査し、違反があれば掲載論文の撤回などの措置を講じ、違反の内容が本学会の社会的信頼性を著しく損なう場合には、本学会の定款にしたがい、会員資格などに対する措置を講ずる。
第2項
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本学会の役員、各種委員会委員長、COI自己申告が課せられている委員およびそれらの候補者について、就任前あるいは就任後に申告されたCOI事項に問題があると指摘された場合には、総務委員会委員長は文書をもって理事長に報告し、理事長は速やかに理事会を開催し、理事会として当該指摘を承認するか否かを議決しなければならない。当該指摘が承認された時、役員および役員候補者にあっては退任し、また、その他の委員に対しては、当該委員および委員候補者と協議のうえ委嘱を撤回することができる。
第9条(不服申し立て)
第1項
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第8条1項により、本学会事業での発表(学会機関誌、学術講演会など)に対して違反措置の決定通知を受けた者ならびに、第8条2項により役員の退任あるいは委員委嘱の撤回を受けた候補者は、当該結果に不服があるときは、理事会議決の結果の通知を受けた日から7日以内に、理事長宛ての不服申し立て審査請求書を学会事務局に提出することにより、審査請求をすることができる。審査請求書には、委員長が文書で示した撤回の理由に対する具体的な反論・反対意見を簡潔に記載するものとする。その場合、委員長に開示した情報に加えて異議理由の根拠となる関連情報を文書で示すことができる。
第2項
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- 不服申し立ての審査請求を受けた場合、理事長は速やかに不服申し立て審査委員会(以下、審査委員会という)を設置しなければならない。審査委員会は理事長が指名する本学会会員若干名および外部委員1名以上により構成され、委員長は委員の互選により選出する。総務委員会委員は審査委員会委員を兼ねることはできない。審査委員会は審査請求書を受領してから30日以内に委員会を開催してその審査を行う。
- 審査委員会は、当該不服申し立てにかかる総務委員会委員長ならびに不服申し立て者から必要がある時は意見を聴取することができる。
- 審査委員会は、特別の事情がない限り、審査に関する第1回の委員会開催日から1ヶ月以内に不服申し立てに対する答申書をまとめ、理事長に提出する。
- 審査委員会の決定を持って最終とする。
第10条(細則の変更)
本細則は、社会的要因や産学連携に関する法令の改変などから、個々の事例によって一部に変更が必要となることが予想される。理事会は、本細則の見直しのための審議を行い変更することができる。
附則
施行期日
第1条
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本細則は、平成30年4月1日から施行する。
本細則 (2019年改訂ver.1) は、平成31年4月1日から施行する。
本細則 (2019年改訂ver.2) は、令和元年9月11日から施行する。
本細則 (2020年改訂ver.1) は、令和2年6月1日から施行する。
本細則 (2022年改訂ver.1) は、令和5年5月10日から施行する。
本細則の改正
第2条
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本細則は、社会的要因や産学連携に関する法令の改正、整備ならびに医療および臨床研究をめぐる諸条件の変化に適合させるために、最初の見直しは、完全実施から1年後をめどとして行い、以後、原則として、3年ごとに見直しを行うこととする。
役員などへの適用に関する特則
第3条
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本細則施行の時に既に本学会役員などに就任している者については、本細則を準用して速やかに所要の報告などを行わせるものとする。