過活動膀胱診療ガイドライン[第3版]
過活動膀胱診療ガイドラインは、2005年に第1版が発刊され、2008年には第1版追補版が発刊されました。さらに7年経過した2015年にガイドライン第2版が発刊され、27個のクリニカルクエスチョン(CQ)が初めて作成されました。そして、第2版から7年を経過して、今回第3版が改定・発刊されました。
過活動膀胱(Overactive Bladder)とは、「尿意切迫感」を必須症状とし、通常は夜間頻尿と頻尿を伴う症状症候群であり、同様の症状を呈する悪性腫瘍(膀胱がん、前立腺がん、子宮がん、直腸がん)などの局所的な疾患を除外する必要があります。尿意切迫感とは、「突然起こる我慢できないような強い尿意であり、通常の尿意との相違の説明が困難なもの」です。過活動膀胱はQOLを阻害する困窮度の高い下部尿路症状であり、40歳以上の日本人の有症状率は約12.4%と非常に頻度が高く、加齢とともにその頻度は増加します。過活動膀胱の原因疾患の中には、より適切な治療のために一度は専門医の診察が推奨されるものがあります。また、過活動膀胱の診療の際には、下部尿路症状を引き起こす可能性のある薬剤の服用歴も聴取する必要があります。
今回のガイドラインの新規の内容としましては、過活動膀胱とフレイル・認知機能低下の関係、高齢過活動膀胱患者に対する治療、難治性過活動膀胱に対する治療、低活動膀胱に伴う過活動膀胱、前立腺がん治療に伴う過活動膀胱、などが含まれます。成人向けのアルゴリズムのなかの一般医向けでは感染症治療内容を詳述し、専門医向けアルゴリズムでは女性骨盤底障害の鑑別経路が追記されました。また、初めて小児用のアルゴリズムを作成しました。CQは、第2版27個から52個と2倍近くとなり、新規CQは31個となりました。
本ガイドラインが過活動膀胱を訴える患者さんの診療に関わる一般医、専門医、看護師、介護士などの医療従事者に活用され、過活動膀胱に対する適切な診療の普及のお役に立つことを期待しています。
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